バリアンさんたちが出かけてくのを見送った後も、僕は残った人たちと一緒にベニオウの実を採ってたんだ。
でも、さっきジャイアントラットがこっちに来た時にはもう、もうそろそろいいかな? って思うくらい採れてたでしょ?
だからあっという間に干し草の上はベニオウの実でいっぱいになっちゃったもんだから、僕は採るのをやめて木の下におりてきたんだ。
「おお、これはまた、いっぱい採れたものだな」
そしたらね、丁度そこにバリアンさんたちが帰って来たんだ。
だから僕、おかえりなさいって言おうと思って声がした方を見たんだけど、
「わぁ!」
そしたらボルティモさんがおっきなジャイアントラットを木に括り付けて担いでたもんだから、僕はびっくりしておかえりなさい外えなかったんだ。。
だってさ、ジャイアントラットって名前の通りとってもおっきいんだよ。
なのにそれを一人で運んできたんだから、そりゃあびっくりするよね。
「ボルティモさん、すっごい力持ちなんだね」
「ん? ああ、違う違う。これは魔道具を使っているんだ」
だからボルティモさんにすごいねって言ったんだけど、そしたら笑いながらこの魔道具のおかげだよって。
そっか、そう言えば村でもそう言う魔道具、使ってるもんね。
そう思いながら、ボルディモさんが指さしてるとこを見たんだけど、
「あれ? 僕が知ってるのと違う……」
そこにあったのは村で使ってるひもの付いたアミュレットじゃなくって、ちっちゃな魔石が何個かついてる金色の輪っかだったんだ。
それを見て何で違うんだろうって思った僕は思わずそう言っちゃったんだけど、そしたらボルティモさんが不思議そうに聞いてきたんだよね。
「何が違うんだい?」
「あのね。僕の村でも、採った魔物を運ぶのに重さが軽くなる魔道具を使ってるんだ。でもね、それはおっきな魔石にひもがついてるやつなんだよ」
「へぇ、そんなのもあるのか」
僕のお話を聞いたボルティモさんは、場所によって魔道具の形も違うのかなぁ? なんて言ったんだ。
でもね、それを聞いたバリアンさんは、ちょっとあきれた顔でボルティモさんになんで知らないの? って。
「あのなぁ、ルディーン君が言っている魔道具が本来の形なんだぞ」
「えっ! じゃあ、この魔道具は特殊なものなんですか?」
「特殊と言うか、どちらかと言うと廉価版と言った方が正しいかな」
バリアンさんが言うにはね、この魔道具は付いてる魔石の魔力分だけ物を軽くすることができるそうなんだよ。
グランリルの村で使ってるものを軽くする魔道具って、ついてるひもが周りの魔力を吸収してくれるもんだから何度も使う事ができるでしょ?
でもそう言うのはおっきな魔石や強い魔物の素材を使わないと作れないから、買おうと思うとさっき見せてもらった物よりず〜っと高いんだって。
「だがな、ルディーン君が言っているタイプの魔道具は高いだけあって、時間の経過で再度使用できるようになるんだ」
「そうなんですか? なら多少高くても、長い目で見るとそちらの方がいいんじゃないですか」
「確かにそうだが、残念な事に一度魔力を消費すると再使用までには結構な時間がかかるらしい。だからそのタイプの魔道具を使うのであれば、最低でも3個は欲しい所なんだ」
「3個も!?」
1個でも高いのに、そんなのを何個も買う事なんてできないよね。
だから高いのじゃなくって、バリアンさんたちはこっちを使ってるんだよって教えてくれたんだ。
「そう言えば僕んちにも、軽くする魔道具がいっぱいあったっけ」
「そうだろう? と言う訳で俺たちはこの廉価版を使っているわけだ。だがな、こっちの廉価版も悪い事ばかりじゃないんだぞ」
「そうなの?」
「ああ。ここについている魔石は使い捨てだが、この土台になっているリングは使いまわす事ができるんだ。だから使い切ったものをもう一度魔道具屋に持っていくと、新しい魔道具からその買取分だけ値引きをしてもらえるんだよ」
この魔道具はね、魔石に魔法陣が刻まれてるアミュレット型と違って、輪っかにちょこっとだけ使われてる魔法金属んとこに魔法陣が刻まれてるんだって。
だからついてる魔石は魔力を使いきっちゃうと崩れてなくなっちゃうけど、魔道具としての本体である輪っかはそのまんま残るでしょ?
それを魔道具職人さんとこに持ってって新しい魔石をつけなおせば、またつけたものを軽くすることができるようになるんだってさ。
「それにな、安い分だけ破損や紛失をしたとしても、それほど懐が痛まない」
「え〜、無くしちゃう事なんてあるの?」
これを聞いた僕はびっくり。
だってうちで使ってるのより安いって言っても、この魔道具だってきっと高いはずだもん。
だからそんな事もあるの? って聞いてみたんだ。
そしたらさ、意外と多いんだよって。
「この魔道具は見ての通り、倒した魔物やはぎ取った素材を入れた袋を軽くして運ぶための物だ。でも、街に帰る途中に魔物に襲われるなんて事もあり得るだろ?」
「そっか! 相手が強かったら逃げないとダメだもんね」
「ああ、そうだ。魔道具よりも命の方が大事だからな。邪魔になるようなら、戦利品に着けたまま逃げる事になる」
バリアンさんたちはイーノックカウの冒険者の中でも強い方だから、勝てないような魔物に襲われて魔道具を捨てなきゃいけないなんて事は今までに数回しかないそうなんだよ。
でも冒険者さんの中には何度も魔道具を無くしちゃうもんだから、そのせいで借金を作っちゃうなんて人もいるんだってさ。
「まぁそんな奴らは自分の実力に合わない場所にばかり行く連中だろうし、元々冒険者に向いていないやつなんだろうけどな」
ちゃんと自分たちで対処できる魔物しかいないとこに行っていれば、危なくなって逃げなきゃいけないなんて事には早々ならないんだよってバリアンさんは笑うんだよ。
「だがな、この間のポイズンフロッグのように予想外の場所に強い魔物が現れる事があるし、それほど強くない魔物でも数が多ければ手に負えないなんて事もあるんだ。だからな、ルディーン君。安く手に入ると言うのは森の奥に分け入る俺たちのような冒険者には大事な事なんだぞ」
「そっか。いっぱいいると、やっつけるのも大変だもんね」
前にお父さんたちとポイズンフロッグをやっつけに行った時だって、僕がブルーフロッグを寝かせる事が出来なかったらもっと大変だって言ってたもん。
弱っちい魔物は一か所にいっぱいいる事が多いし、もしその全部に絡まれたらおっきな怪我をしちゃうかもしれないから、逃げた方がいいよねって僕も思う思うんだよ。
「それとな、こういう魔道具は実を言うと結構多いんだぞ」
「そうなの?」
「ああ。家の中にある魔道具なら魔道リキッドを使えばいいが、街から街へと移動する商人なんかは、その途中で何かの拍子にリキッドを入れたツボやビンが破損するなんて事があり得るだろ? だからそう言う連中は魔石をリキッド代わりにできる魔道具を持ち歩いているんだ」
魔道リキッドは液体だから、魔道具についてる入れ物が壊れちゃったら全部こぼれちゃうでしょ?
でも魔石だったらそんな心配しなくてもいいから、旅商人なんかが持ち歩く魔道具は魔石で動く魔道具が多いんだって。
「そしてそんな魔道具があるおかげで、本来は魔道具に核になりえないジャイアントラットみたいな魔物の魔石でも、冒険者ギルドは高く買い取ってくれるって訳だ」
バリアンさんはそう言いながらジャイアントラットの頭をポンって叩くと、僕に向かってニカッて笑ったんだ。
確か前に感想返しで書いた覚えがあるのですが、本文の中で書かれている通り魔石は内包する魔力がすべてなくなると形が保てずに崩れてなくなってしまいます。
ですから、実を言うと普通の魔道具も魔道リキッドを入れ忘れてそのまま使い続けると、核になっている魔道具が崩れ去って使えなくなってしまうんですよね。
また、長い間魔道リキッドで動かし続けた場合も魔石そのものの劣化が進んで、崩れはしませんがやはり本来の性能を発揮できなくなります。
まぁそのおかげで魔石の需要はいつまでたっても無くならないんですけどね。
因みに前にルディーン君が作った魔道乾電池は魔道リキッドだけでなく、この手の魔道具の必要性まで奪ってしまいます。
あれを世に出したら、本当に大変な事になってしまうだろうなぁw